榮太樓

4月のお話し-梅ぼ志飴-品名の話-

榮太樓總本鋪の代表菓子でもある有平糖「梅ぼ志飴」。あま~い飴なのに名前はうめぼし。
今回はこの梅ぼ志飴のお話しです。

榮太樓の代表商品「梅ぼ志飴」はなぜ今も売られ続けているのでしょうか。
それと、なぜ「梅ぼ志飴」と言う品名をつけたのですか?

梅ぼ志飴の持つ品質特性の面から見て、次の二つがあると思っています。

第一は、独特のコクのある風味です。純度の高い良質の砂糖を溶かした糖蜜を、短時間、高熱の直火で加熱、濃縮することによって生ずる砂糖の熱分解がもたらす「カラメル」を主体とした複雑な化学物質によって作られる風味なのです。
人口香料や味付けをしているものと異なり、自然にできたものですから、さわやかな中にもコクのある風味であり、それだけに飽きがきません。

二つめは、その歯切れの良さです。口に入れるとカリカリと硬いけれど軽やかに噛み砕くことができ、他の飴に比べて歯にはつきません。

明治の初め頃は、梅ぼ志飴はその製造工程の中で煮詰まった飴を鍋から冷却工程に移した時点で本紅を混ぜて着色し、適当な温度と硬さになった時に棒状に伸ばして鋏で一粒ずつ小さく切り、その切口を三本の指で摘み押さえて成型して作られていました。
色は赤く、形は摘まれるために表面にしわが出来ているその姿が、あの酸っぱい漬け物の「梅干」に似ていることから、敢えて酸味とは正反対の甘いこの飴に、江戸っ子の洒落と機智を働かせて、「梅ぼ志」と名付けたのです。